管理職の「現状維持バイアス」を打破する3つのステップ(実例)
「新しい仕組みは、うちの会社の規模や風土には合わないと思います」 「来期の目標は、『ミスのない通常業務の遂行』に設定しました」
経営者のみなさまは、現場を任せている管理職からこのような言葉を聞いて、もどかしく感じたことはないでしょうか。 「もっと挑戦してほしいのに」「なぜ変化を拒むのだろう」と。
彼らは決して怠け者ではありません。むしろ、日々の業務には誰よりも真面目に取り組んでいます。 それなのに、「よりよくしよう」「新しい仕組みを取り入れよう」という話になると、途端に動きが鈍くなり、変化を「リスク」と捉えてしまう。
そこには、個人の性格以前に、組織を覆うある心理的な作用が働いています。 その正体と、現状維持を打破して組織を変革するための具体的なアプローチについて見ていきましょう。
なぜ彼らは「変わること」を恐れるのか?
管理職が変化をためらう背景には、心理学でいう「現状維持バイアス」という作用が強く働いています。
人間には本能的に、「何かを得る喜び」よりも「何かを失う痛み」を大きく感じる性質(損失回避性)があります。そのため、未知の変化によって得られるかもしれない「成果(プラス)」よりも、今の安定が崩れるかもしれない「リスク(マイナス)」の方を、無意識に過大に見積もってしまうのです。
特に中小企業の管理職は、自らも現場で動く「プレイングマネージャー」であることが多く、日々の実務に追われています。 彼らにとって、新しい仕組みや業務改善は、単純に「追加の負荷」に見えます。その結果、「通常業務を滞りなく回すこと」=「目標」として設定し、安心感を得ようとするのです。
しかし、ビジネスの世界において「現状維持」は「後退」と同義です。ましてや、VUCAと呼ばれる変化の激しい現代において、変化しないことのリスクは経営にとって致命的になりかねません。
精神論では変わらない。「仕組み」で行動を変える3つのステップ
では、この「現状維持バイアス」を打破するにはどうすればよいのでしょうか。 「もっと意識を変えろ」と精神論を説くだけでは、人は動きません。
実際に私たちがお客さま先で実施し、組織の変革につながった「3つのステップ」をご紹介します。大切なのは、「仕組み」と「定義」の再設定です。
ステップ1:「仕事」の定義を書き換える
まず、社内における「仕事」の定義を変えることから始めます。 「決められたことを遂行する」のは「作業」であり、管理職の「仕事」とは「今日より明日を良くすること(改善・変革)」であると明文化してください。 「通常業務を回すのは当たり前の0(ゼロ)地点。そこから何をプラスしたかが評価対象である」というメッセージを、言葉だけでなく人事評価制度にも組み込むことが重要です。
ステップ2:「変わらないことによるリスク」を可視化する
バイアスにかかっている人は、変化のリスクしか見ていません。そこで視点を変えさせます。 「このまま今のやり方を続けると、3年後にはこうなる」 競合の動きや市場動向、原価の高騰などを交えて、「変化しないことが安全ではなく、実は最も危険な選択である」という事実を、数字で具体的に共有してください。
ステップ3:「小さな変化」から進めて、成功体験をつむ
いきなり大きな改革を求めると、現場の防衛本能が働き、バイアスはより強固になります。 まずは些細な業務フローの変更など、「小さな改善」から進めてみてください。「変えてみたら、意外と楽になった」という小さな成功体験の積み重ねこそが、強固なバイアスを解きほぐす特効薬になります。
「合わない」は思考停止のサイン。そこから「対話」を始めよう
「うちには合わない」 管理職からこの言葉が出た時、それは彼らが思考停止(現状維持バイアス)に陥っているサインかもしれません。
しかし、そこで諦めたり突き放したりするのではなく、そこからがスタートです。 「なぜ合わないと思うのか?」 「合わないなら、合う形にするにはどうすればいいか?」
そう問いかけ、対話を重ねてみてください。 現状維持という「心地よい場所」から彼らを引き上げ、荒波の中でも舵を取れるリーダーに育てるには、経営者の「対話」と「根気」が不可欠です。
みらいコンサルティンググループは、組織の意識改革や次世代リーダーの育成をご支援しています。組織の「壁」を感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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