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2025.02.05
引き継げる経営

非上場株式の相続税評価見直しの影響

非上場株式の相続税評価見直しの影響…

最近、会計検査院が非上場企業の株式の相続税評価の方法を見直すよう求めているという報道がありました(日本経済新聞2025年2月1日)。

非上場企業の株式の評価方法には、主に次の3つの方式があります。

 1.類似業種比準方式:同じ業種の上場企業の株価を参考に計算する方法

 2.純資産価額方式:会社が持っている資産や負債を基に評価する方法

 3.併用方式:上記2つの方式を組み合わせる方法

この評価方法の違いによって、同じ会社の株式でも評価額に大きな差が生じることがあります。特に、純資産価額方式での評価額は高くなる傾向があり、節税のために類似業種比準方式を選ぶケースが多いそうです。

評価額の違い

2020~2021年におこなわれた相続税の申告において、616社を調査した結果、

 ・純資産価額方式の中央値:4万2648円

 ・類似業種比準方式の中央値:1万1622円

と、約4倍の差があることが分かりました。そのため、会計検査院は「公平な評価がされていない」と指摘し、国税庁に評価方法の見直しを求めています。

企業経営と株式評価の実態

私たちが企業の株式評価をする中でも、歴史のある会社では純資産価額が類似業種比準価額の4~5倍になることがあります。ただし、規模の大きい企業では、純資産価額と類似業種比準価額のうち、低い方の評価額が適用されるため、類似業種比準方式が使われるケースが多くなります。

しかし、純資産価額は「会社を解散した場合の資産価値」として計算されるため、事業を継続する前提で考えると実態と合わない場合があります。そのため、類似業種比準方式の方が、企業の実際の価値を反映していると考えられます。

後継者による株式の取得の難しさ

非上場企業では、経営を引き継ぐために後継者が株式を買い集める必要があります。しかし、純資産価額での購入は非常に高額になるため、実際には難しいケースが多いです。多くの企業では、経営の維持や成長に資金を使うため、高額な株式を買い取る余裕がありません。

また、会社の株主には、関係が薄くなった親族や元従業員がいることもあり、買取価格をめぐってトラブルになることも増えています。

今後の見通しと対策

非上場株式の評価方法は過去にも改正されており、平成29年の改正では類似業種比準方式における「利益」の影響を小さくする変更がありました。その結果、利益が大きい企業の株価は下がり、逆に純資産が大きい企業の株価は上がるという影響が出ました。

今後、評価方法の見直しがおこなわれると、評価額が上がる方向に改正される可能性があります。そうなると、株式の買取交渉がさらに難しくなるかもしれません。

後継者がスムーズに株式を取得するためには、短期間でまとめて買い取るのではなく、長期的な計画を立てることが重要です。例えば、

 ・毎年の給与や配当の一部を株式買取のための資金として確保する

 ・株価が低いタイミングを見て計画的に買い集める

 ・生前贈与などを活用し、徐々に株式を移していく

といった方法を取ることで、将来的な負担を軽減できます。

株価の評価方法は、経済状況や政策によって変わる可能性があります。経営者が事業で忙しい時期こそ、早めに後継者への株式移転を計画的に進めることが重要です。急に対策を取るのではなく、長期的な視点で準備を進めることで、後継者がスムーズに会社を引き継ぐことができますので、お気軽にご相談ください。

 

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