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短期駐在プロジェクト ーベトナムの歴史が教えてくれた「ビジネスの前提条件」ー

短期駐在プロジェクト ーベトナムの歴史が教えてくれた「ビジネスの前提条件」ー

平和という、目に見えないインフラ

ベトナム最大の経済都市、ホーチミンの中心部には、世界中から多くの人々が訪れる「戦争証跡博物館」があります。そこには、かつてこの地で繰り広げられた戦争の記憶が、目を背けたくなるほど生々しく展示されています。

屋外に並ぶ戦車や戦闘機、そして館内に展示された数々の写真。そこにあるのは、単なる歴史の記録ではありません。枯葉剤の影響で心身に深い傷を負った人々の姿や、凄惨な現場を切り取ったジャーナリストたちの遺品など、見る者の胸を締め付けるような「現実」が、静かに、しかし力強く私たちに伝わってきます。

これらの展示を見つめていると、ひとつの問いが浮かび上がってきます。「私たちが日ごろあたり前のように享受している『ビジネス環境』は、一体何の上に成り立っているのか」ということです。

ビジネスの前提条件としての「平和」

 私たちコンサルタントは、日々、お客さま企業の成長戦略や効率化を議論しています。しかし、そのすべての議論には、ある大きな「前提条件」があります。それは、社会が安定し、法が機能し、市場が平和であることです。

あたり前すぎて意識することすらありませんが、平和こそがビジネスにおける最大のインフラです。ベトナムの博物館に展示されている破壊の跡は、そのインフラがいかに一瞬で崩れ去るものかを物語っています。戦争は、積み上げてきた経済活動を根底からくつがえします。

平和を単なる「理想」や「道徳」の問題として捉えるのではなく、ビジネスの存立基盤そのものであると再定義したとき、私たちの責任はより重くなる気がします。昨今の不安定な国際情勢を前に、その基盤の脆さを自覚しているでしょうか。自分たちの安全な場所だけは守られるはずだという、根拠のない期待にすがってはいないでしょうか。

「感じる力」がビジネスの解像度を上げる

世代が変わり、戦争を直接体験した日本人は今や少数派となりました。現役世代の多くは、飢えや戦火を知らずに育ちました。それは大変幸せなことですが、一方で、歴史の痛みや重みを「心」で捉える力が弱まっているようにも感じます。

ベトナムの歴史が教えてくれるのは、平和とは「何もしなくても維持される平穏」ではなく、一人ひとりの強い意志と行動の先にあるものだという厳しい現実です。

ビジネスの現場においても、相手の国の歴史的な背景や、彼らが何を守ろうとしているのかという「痛み」への想像力は不可欠です。それがないままに自分たちの基準だけで正論を振りかざすことは、真のパートナーシップを築くうえでの障害となります。過去の現実を正面から受け止め、感じる力をたくわえることは、ビジネスパーソンに必要な素養といっても過言ではありません。

真の平和国家への一歩

では、これからの時代を生きる私たちは、どうあるべきなのでしょうか。

結論から言えば、真に平和国家となるためには、私たち一人ひとりが「平和は守られるべき所与の条件ではなく、自らが関与し続けるプロセスである」と意識を変えることが不可欠です。

平和を守ることは、経済を守ることと同義です。そして、その平和を支えるのは、異なる価値観を持つ相手と向き合い、粘り強く対話を模索する「反射神経」と「当事者意識」にほかなりません。

みらいコンサルティンググループが推進している「短期駐在企画」といった機会を通じて海外へ足を運び、現地の空気を吸い、そこで語られる負の歴史にも真摯に向き合うこと。そのプロセスを通じて得られる「感じる力」こそが、思考の深みとなり、ひいてはビジネスの現場において、不確実な未来を切り拓く力へと繋がっていくのだと思います。

「グローバル化」とは、単に国境を越えて商売をすることではありません。その土地の歴史的な重みを知り、共通の基盤である平和の尊さを共有し、ともに未来を創る覚悟を持つことです。ベトナムの博物館で感じたこの衝撃を、私はこれからのビジネス、そして社会への貢献へと繋げていきたいと考えています。

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