8tips世界を駆ける経営
- 2020.10.07
- 世界を駆ける経営
セミナーレポート:大企業イノベーション誕生秘話 前編
「物理的距離と身体的限界をゼロにする」をコンセプトにアバターロボット“newme”を展開するavatarinCEO深堀昂氏&COO梶谷ケビン氏をお招きし、大企業の中でどのように新規事業がうまれ、世界が注目するスタートアップ企業の設立にまで至ったのか、2回にわたりうかがいます。
前編では、お二人の経緯やアバター事業誕生のきっかけ、大企業の中で新規事業を創り出す上でのポイントや起業の本質について語っていただきました。
ポイント
・スタートアップと大企業を融合できれば、これまで実現できなかったこと、クリアできなかったハードルを超えられる。
・良いアイデアも悪いアイデアもない。どんなアイデアも情熱に磨かれる。
・企業内起業は覚悟をもってコミットすると同時に、本来の業務でもピカイチになることでうまくいく。
・ビジョンが大きければ大きいほど、大勢の人が集まる。
みらい「早速お話を伺いたいと思います。お二人の背景と出会いのきっかけをお聞かせいただけますか?」
深堀 昂氏(以下、深堀氏)「私は2008年に総合職として入社しました。パイロットの緊急時の操作手順だったりとか通常時の操作手順を作る仕事をしたくて運航技術部で働き始めたのですが、その部署に入ってその2年後にケビンも入ってきました。ただチームが違うので、すごく仲良いわけではなかったです。」
梶谷 ケビン氏(以下、梶谷氏)「私はアメリカ人なんですけども、ボーイングのエンジニアをしていました。急遽日本に来ることになったのですが、たまたま787の設計の仕事に携わっていたのでその関係で入社しました。入社して半年後に運航技術部から他の部署に異動になったのですが、しばらくするといきなり深掘からメールが一通届きました。件名が”Let‘s Change The World” だったし、深掘とはほとんど接点がなかったので、ウイルスに感染しちゃうんじゃないかなと思って1日2日ぐらい寝かせておいたんですけれども(笑)、深堀ってなんか聞いたことあるなと思って、メールを開いてみたら一緒にランチしませんかって。2人で一番最初に取りかかったブルーウイング(※1)という事業の誘いだったんですけども、それが出会いですかね。」
深堀氏「新しいことをやろうと思った時に真っ先に声をかけたのですが、スパムメールみたいになったという(笑)。」
みらい「事業を起こしたい方もたくさんいらっしゃると思うんですけども、大企業で起業する強みやポイントってどんなところにあると思いますか?」
深堀氏「今、高性能のアバターを開発する国際的な賞金レースを主催してるんですけれども、こういったムーブメントを形成することころからできるのは大企業のメリットだと思います。もう一つが、ブランドイメージ(”優しい”とか”おもてなし”とか)があるので、スタートする時のハードルが低くなっているっていうのを感じます。やっぱり、ロボットってまだまだロボット好きのものだと思われているのですが、私たちとしては、『ロボットを好きではない人が使いたくないけどたまたま使っている』という世の中を作ろうと思ってるんですね。そういうときにこういったブランドやリソース、ネットワークが活きてくるかなと思います。」
梶谷氏「深堀に会う前はスタートアップをやってたこともありますし、大企業はアメリカでも日本でも経験していて良さは両方にあるなと思っています。深堀と出会ったときに彼のブルーウィングの提案にすごく魅力を感じたんですね。スタートアップ的なビジョンを持って、スタートアップ的なやり方とスピードにこだわっていて、かつ会社が持ってるアセットやリソースをうまく融合させて会社のWINにも繋げる、両方のよさを活用できるっていうのにすごく共感できたんです。これまでストレスを感じていた、スタートアップか大企業か、という選択肢ではなくて、両方融合することが出来れば、これまで実現できなかったことやクリア出来なかったハードルを超えられるんじゃないかなと思いましたね。 」
みらい「他にも事業を起こしていく上で大切なことは何でしょうか?」
深堀氏「昔はビジネスコンペとか出るのがすごく好きで、やっぱりグランプリを取ると嬉しいじゃないですか。ただ、それって実際なにもスタートもしてないですよね。最後やるかやらないかっていうのは自分で決めなくてはいけないことであって、やっぱり業務指示だと諦めてしまう。これは当然だと思っていて、サラリーマンとして働く中でうまくいかなくても別に誰も責めないですし、アイデアが悪かったのかなって思うくらいですよね。ただ、 今となって思うのは、良いアイデアも悪いアイデアもないっていうのが事実で、どんな悪いアイデアでも情熱がある人は修正していくんですよね。結局自分が覚悟を決めてどれくらいやるコミットができるかだと思います。」
深堀氏「ジョインしてくれる人達も同じぐらいの熱量で集まっているか、も重要だと思います。私は大企業でやるのであれば意図的に業務外で有志でやったほうがいいと思いますね。それだったらどの部署にいても関係ないじゃないですか。これは結構重要なんですけど、本業を疎かにしてはいけないっていうことですね。若い時って新しいことをやるとそっちをやりたくなってしまうんですよね。でも本業を疎かにするといろいろ言われるじゃないですか、あいつはやりたいことだけをやってる、みたいな。本業でピカイチになったことで結構うまくいき始めましたね。本業でも認められて、さらにプラスでやりたいことを頑張ってる分に対しては否定的にはならないと思うんですよね。」
梶谷氏「ピーター・ディアマンデスさん(※2)が“10億人以上の生活を変えられるアイデアじゃないと世の中なかなか変わらない”といつも言うんですけども、そこまで大きなものに挑戦すると中途半端な思いでは挑めないですよね。上司にダメ出しされたとか、役員に却下されたとか、もちろんへこむんですけど、大きい目標に対して小さなハードルじゃないですか。自分の中で切り替えができるようになったのは大きいですね。大きいビジョンやチャレンジを乗り越えようとしてる人たちにたくさん出会ったことが宝物だと思ってますし、このアバター事業を支えてくれたかなという風に思います。」
深堀氏「描いてるビジョンを何が何でも達成したいと思っているか、かつ、それが自分のエゴではなくて、そのビジョンによって大勢の人たちが豊かになったり、笑顔になったりできるかっていうのが大事だと思います。ビジョンが大きければ大きいほどより大勢の人が集まると思いますし、信じてるパワーが強いほど同じ熱量で集まる人も多いと思いますね。」
梶谷氏「世の中を変えるチャンスって、人生の中でそんなに多くない中で、それに触れられるだけで幸せだと思います。やってることが新しい挑戦で、うまくいけば本当に大勢の方にプラスになると思うとワクワクするし、とにかくそういうことは楽しいですね。」
※1 : 深堀氏と梶谷氏が社内で立ち上げた新規事業の1つ。
※2:XPRIZE財団の創設者。当財団の主催するコンテストにてアバターの構想がグランプリを受賞。
世界を変えるアバター”newme”のアイディアはどのように生まれ、国際的コンテストでの圧倒的最下位からどのような道のりを経てグランプリを勝ち取ったのか?
詳しく知りたい方は是非下記動画をご視聴ください。
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avatarin株式会社
代表取締役CEO 深堀 昂 氏(写真 左)
2008年に、ANAに入社し、パイロットの緊急時の操作手順などを設計する運航技術業務や新たなパイロット訓練プログラム「B777 MPL」立ち上げを担当するかたわら、新たなマーケティングモデル「BLUE WINGプログラム」を発案、Global Agenda Seminar 2010 Grand Prize受賞、南カルフォルニア大学MBAのケーススタディーに選定。2014年より、マーケティング部門に異動し、ウェアラブルカメラを用いた新規プロモーション「YOUR ANA」などを企画。
取締役COO 梶谷 ケビン 氏(写真 右)
2006年に、アメリカのボーイングに入社し、ボーイング787開発チームにて航空機の性能技術に関する業務を担当。2010年にANAに入社し、運航技術部にてボーイング787の導入支援業務を担う。2014年にデータベースマーケティング部に異動し、需要予測システムを設計。2016年にデジタルデザインラボに異動、新たなビジネスモデルの創造、エアライン初となるマイレージを活用したクラウドファンディングサービス「WonderFLY」などを発案しサービス化。
2016年10月にXPRIZE財団主催の次期国際賞金レース設計コンテストに参加し、アバターロボットを活用して社会課題解決を図る「ANA AVATAR XPRIZE」のコンセプトをデザインしグランプリ受賞、2018年3月に開始し、現在81カ国、820チームをこえるアバタームーブメントを牽引中。2018年9月、JAXAと共にアバターを活用した宇宙開発推進プログラム「AVATAR X」をリリース、2019年4月、アバター事業化を推進する組織「アバター準備室」を立ち上げ、共同ディレクターとしてプログラムをリード。
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