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2022.04.13
右肩上がりの経営

最近注目の“人的資本”とは

最近注目の“人的資本”とは…

本日は、最近、新聞紙面等でも経営における重要なキーワードとして取り上げられている、「人的資本」についてご案内いたします。

 

企業価値は、これまでの「有形資産(工場や設備など)」から「無形資産(研究開発やアイデア、ブランド価値、サプライチェーンなど)」の占める割合が高くなっています。

株価においても、無形資産の時価総額への影響は大きく、「人的資本」はこの無形資産の大切な一つとなります。なお、上場企業に求められている「コーポレートガバナンス・コード(※1)」においても、2021年の改定によりこの「人的資本」への投資等に関する記載が追加されています。

 

※1)「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・ 従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。「コーポレートガバナンス・コード」とは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものとなる。

 

このように人的資本とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方となります(これを「人的資本経営」ともいいます)。

そして、人的資本は、「ESG投資(※2)」における投資評価項目の1つとしても考えられ、このうちの「S(Social=社会)」の部分として、特に将来の企業収益につながるものとも想定されています。

 

※2)「ESG投資」とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指す。気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されている。

 

海外に目を向けてみますと、既に、人的資本に関する情報開示のルール化が進んでいます。米国では、2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)により、上場企業に対して人的資本に関する開示を義務付けており、従来からあった「従業員数」に加えて、「人的資本に関する説明」「企業が経営上重視する人的資本に関する施策・目的」を開示するよう求めています。一方で、この時点では、具体的な開示項目までは規定されていませんでした。

その後、2021年6月には、米国の上場企業に対して人的資本の情報開示を求める法案「Workforce Investment Disclosure Act of 2021」が米国下院を通過しました。この法案では、人的資本に関する具体的な8つの開示項目を義務づける内容となっており、各項目の開示基準についてはSECが策定することとなっています。また、本法律の制定後2年以内に、各項目の開示基準が策定できなかった場合には、「ISO 30414(※3)」を開示基準として使うことについても明記がされています。

 

※3)「ISO 30414」とは、2018年12月に国際標準化機構(ISO)が公表した、人的資本に関する11の領域と58の指標について定めた「情報開示のガイドライン」であり、組織規模、内部向け/外部向け指標に分類がされている。

 

日本国内においても、人的資本の情報開示指針の作成に向けて、検討が進んでいます。内閣官房においては、企業の人的資本への投資の取組など非財務情報について、有価証券報告書の開示の充実に向けた検討を行うとともに、投資家や企業の意見を踏まえ、市場への影響を見極めた上で、適時開示を促進しつつ四半期開示を見直すことを検討するとしています。現在、開示項目として想定されているものには次のような事項があり、この人的資本については、全ての企業において様々な影響が生じるものと考えられ、今後も注目が必要です。

 

●女性や外国人従業員の比率

●中途採用者の雇用情報

●リスキリング(単なる学び直しではない。「仕事において価値創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」)

●人材教育

●ハラスメント防止対策 など

 

一度にすべての対策をするのはなかなか大変ですが、できるところからひとつずつ取り組んではいかがでしょうか。

 

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